自転車ユーラシア大陸横断記

Cross Eurasia by Bicycle

52日目 四川省、康定~四川省、理塘

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康定に着いた日の2日後にお祭りがあると聞いたので、康定には3泊した。

祭りがあるという情報しかなくて、どこで何をするのか全くわからなかったけど、適当に人の流れに乗ってれば着くだろと思ってたら、着いた。

 

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跑马山という山に登って、踊りとか寺とか見る。結構盛大で面白かったけど、クロックスで登ったらクロックスに穴が開いてしまい割と絶望した。

 

康定の街はこれからチベットに行く人達が高度順応するための街でもあり、毎日たくさんの旅人が来る。毎日違う旅人たちと会えて楽しい。

ここから国道をそれて100キロくらい北に行くと丹巴っていう成都で知り合った人がお勧めしてくれた町があるんだけど、寄り道する気力が微塵も無かったので行くのやめた。

 

4日目 康定~新都橋

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朝ごはんは、この恐ろしくマズイパンとみそ汁とひまわりの種。マズすぎてパン単品だと身体が食べ物だと認識してくれない。「なんで紙粘土食ってんだろう」って思えてくる。みそ汁なかったら昔飼ってたハムスターの方が確実に良い食事してる。

 

これに比べれば最初のころまずいって文句言ってた饅頭(中に何も入っていないやつ)が身に染みるくらいうまい。

 

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康定を出発する。この日は4300mの峠があるので登り続ける。疲れたとかキツイとかは考え飽きてくるのでほぼ無心で登り続ける。

 

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4000m近くなってくると環境が変わってくる。まず寒い。あと息がすぐに切れる。水を飲んだりだとか、ちょったした会話とかで呼吸を怠ると息が切れる。

4000mを超えたところで吹雪にあう。雪と風がすさまじい。

全然想定してなかったので装備がない。身体は寒いけどまだ何とか、1番きつかったのは手。何も防寒具がない。身を隠す場所もない。雪が真横から吹き付けてくる。

一本道だから迷うことはないけど視界もほぼない。

 

これは本格的にマズイと思った。

ただ、こういう危機に瀕したとき人間は意外と冷静でいられるもので、「あと2~3キロ歩けば、必ず山頂がくる…」と思って歩き続ける。

1時間くらい歩いて着いた山頂にはでかいテントがあったので駆け込む。体の震えがすごい。

身体と手を少し温めて、雪が弱くなった隙を見てすぐ下る。早く高度を下げて気温を上げないともう身体が持たないと思った。

 

下る。手の感覚はないけど無我夢中で下る。雪が雨に変わる。そこで見た景色は壮大だったけれど、写真を撮る余裕は一切なかったし、まず手が固まって内ポケットのカメラを取ることができなかった。

 

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標高3600m、新都橋に着く。

正直、新都橋で特に強く印象に残っていることはない。ただ、着いた時は心の底から「良かった…」と思った。

 

5日目 新都橋~雅江

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新都橋から理塘という街まで200キロちょっとあるけど、そのうち大体200キロは未舗装路だった。ひどい所は自転車に乗ることすらできない。全部で30キロくらいは押したと思う。

中国人はみんなごっついマウンテンバイクに乗っている。

時々一瞬だけあらわれる舗装路を見つけると叫ぶくらい嬉しい。

未舗装の上り坂で「へい日本人!頑張れ! お前ここまで何日で来た? 5日? ははっ、俺なんて4日で来たもんねー」と言っていた鼻毛の長いおっさんを舗装の上り坂でぶっちぎったときは最高の気分になる。

 

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あと、「なんか日本人が走ってるらしい」ってことでこの道で自分はちょっとだけ有名。

時々見知らぬ人に「あ、もしかして日本人?」って話しかけられて、一緒に写真を撮ったりする。街を歩いていてもよく話しかけられる。

 

ただ、ここからほぼずっとダートで体もそうだけど、自転車とか他の荷物がもつか心配だった。今理塘に着いたから思うけど、本当によく持ってくれたと思う。

 

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出発する。この日は4400mの峠がある。前日の教訓を活かし防寒をしっかりする。この日は軍手もある。

4000mを超えたところであられが降る。だけど風は無いし、昨日よりは楽。もうこれがここの環境なんだとあきらめて走る。ときどき押す。

 

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4400mに着く。頭がズキズキ痛い。高山病だ。

早く下りたくてもこの山はなかなか下ってくれない。4400mを10キロくらい走らされる。寒気と吐き気がしてくる。この時は完全に風邪を引いて、その症状が一気に来たのかと思った。

 

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ここで昨日壊れたラッパと鍋と味の素を岩陰にそっと置いてきた。ふざけてる場合じゃないと思った。

だけど、この日の本当につらかったのはここから。

下りの道の荒れ方がすさまじい。振動が来るたびに、頭にガンガン響く。自転車に乗れない所は寒気と吐き気を感じながら押す。

世の中にこれ以上きついことはそんなに多くないだろうと思った。

下りなのにもうこれ以上は進めないと何度も思った。

 

でもまぁ、人間頑張れば何とかなるもので。標高2600m、雅江に着く。高度を下げてもすぐには高山病は収まらないので、まだ頭が痛い。

 

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宿まで車で行ってくれるらしいので、車の中で休む。チベット族の宿で内装とかの文化が違うし、宿の人はチベット語で話している。宿のついたころには頭痛は収まっていた。

 

6日目 雅江~名前がわからない場所

自分では風邪だと思っていたので雅江では2泊した。

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大丈夫そうなのでスタートする。天気はいい。まずは30キロ、ダートの上り坂。高山病が怖いのでめちゃくちゃゆっくり走る。2時間走って進んだ距離6キロ。歩きより遅い。ただ、頭痛さえ来なければ何時間でも乗れると思ったのでこのペースでいく。メーターを見るたびに心が折れそうになるので、Perfumeとかaiko聞きながら何も考えずに登る。

 

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牛がいる。

 

自転車を積んだバンがどんどん抜かしてくる。最近の4000m級の峠は車で通過する人が多い。理塘までは100元。正直自分もものすごく使いたかったけど、ここが頑張りどころかなと思ってやめとく。

 

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登っていると、下から「カナザワー!」って声がした。ん、俺か?と思って振り返る。

二郎山で叫んでくれてた冯鹏とクマだ!みんな中国読みで名前を呼ぶ。「カナザワ」とか日本語読みで呼んでくれるのはこの二人だけだ。

「おー!お前も走ってるのかー!」

「車なんて使わないよ、俺たちは今日理塘まで行くぜ! じゃ!」

というやり取りをしてぶっちぎられる。タフだなぁーと思った。

 

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4600mの峠に着く。高山病はない。

ただ、ここから理塘まで4000mを下回ることはなく、ずっと4000m越えでのアップダウンが続く。

 

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空の青さが濃い。

 

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途中チベット人経営の売店が所々にある。こんなんだけど、貴重な補給ポイントになる。

 

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 下り坂でパンクした。何でこんなところで…と焦って直したせいで、タイヤがチューブを噛み1回目の修理は失敗。

破裂したチューブを投げ捨てて、落ち着く。よく考えたら今日で良かった。3日前の吹雪とか2日前の高山病の時にパンクしていたら乗り切れなかったかもしれない。テントもあるし、頭も痛くない。ゆっくり進めばいいやって思った。

 

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4700mの峠。少し頭が痛いけど問題ない。

 

19時を過ぎて、薄暗くなったころに見つけた飯屋の裏にテントを張らせてもらった。チベット人が集まってくる。なんて言ってるかわからないけど、たぶん「俺たちがいるから安心して寝ろ!」って言ってくれていると信じて安心して寝る。

この日の走行距離は70キロ。これは12時間自転車に乗ってようやく出せる距離でめちゃくちゃ疲れた。

夜、テントの外に出ると星がすごい。星がすごすぎてなんか怖い。

 

7日目 名前わからない場所~理塘

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朝、麺を食べて走り始める。覚悟はしてたけどだいぶ寒かった。

 

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90キロぶりのチベット族の村。子供達が集まって来て、応援してくれる。写真を撮ろうかと思ったけどなんとなくやめておいた。

 

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 最後の峠を越えて見えた理塘の町。

この時の気持ちは何て言い表せばいいか難しい。「はぁ~着いたぁ~」って感じ。

標高4000m、理塘に着いた。

 

走行距離

   80km

   92km

   74km

   60km

 


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